The Beginning of KURA
24 Jul 2025
Written By 松上 明弘
- Concept / Vision
 
        KURAは、デジタル世界において職人技、デザイン、そして真正性が尊重される場所を作りたいという想いから生まれました。技術革新によってデジタルアセットが大量生産され、非常にリアルではあるものの、その起源から切り離されてしまうことが多い時代において、私たちは建築、プロダクトデザイン、伝統工芸を問わず、職人技の本質を尊重するキュレーションされた"場所"を構想しました。
時を経て輪郭がようやく形となり第一歩を今踏み出しています。
KURAは日本の「蔵(くら)」の役割や概念になぞらえています。歴史的遺物、道具、芸術品が次世代へ受け継がれるために保管されたように、KURAは制作者たちの真摯な意図と本物らしさを尊重した、精巧に制作された3Dアセットのデジタル保管庫としての役割を果たします。
一般的なデジタルアーカイブや、3Dアセットマーケットプレイスとは異なり、KURAは閉鎖されたコミュニティあるいは網羅性や商業的な成功のいずれかに偏ることはありません。オープンでありながら、品質、精度、そして文化的価値や循環に重きを置いています。
私たちの目的は、デジタルアセットが単なる道具ではなく、現実世界と同じように作り手の意図や職人技、専門性を表現するものとなり、正しく存在し、循環していく場所を創ることです。

私たちが目指すもの
私たちが目指している姿は、以下のテーマで形作られています。
作り手とクリエイティブに関わる全ての人々の信頼できるプラットフォーム
私たちはメーカー様やクリエイターの方々と協力し、作り手が認めたデジタル化を推進していきます。これにより、各アセットは現実世界と同じように真正なアイデンティティを保持し、流通することができます。クリエイティブのワークフローやデジタルアセットの活用において、私たちの目的は透明で美しいコミュニケーションの基盤を提供することです。これにより、各プロフェッショナルが「グレーな、それっぽいデータ」を固有名詞で呼ばざるを得ない必要がなくなります。このようにして、私たちは真正で承認されたアセットと、汎用的で大量生産された代替品とを区別する役割を果たしていこうと考えています。
キュレーションされた、高品質なデジタルアセット
KURAはクリエイティブのプロフェッショナルのためのキュレーションされたデジタルアセットの流通の場として機能し、厳格な品質と真正性の基準を満たす3Dアセットを特集します。これらのアセットは、卓越したリアリズムと同時に精神的に本物を求める建築家、インテリアデザイナー、プロダクトデザイナー、CGアーティストのビジュアライズやインスピレーションのニーズを念頭に置いて開発していきます。
流通し循環しつづける持続可能で倫理的なデジタルコマース
デジタルの世界では、手軽に作られたお手頃のコンテンツが溢れ、本来のものづくりの価値や作り手の想いが薄れがちです。また、デジタルアーカイブ化されても循環していないものも多く存在します。KURAは、デジタルアセットが適切に評価されることに加え、経済圏から切り離さずに、実用性を伴った流通を前提としています。デジタルアーカイブに関わった制作者への公正な対価を確保し、各デザインの起源への尊重を維持する持続可能なエコシステムを創造することで、もっと魅力的な世界が描けるのではと考えています。私たちは規制や制御ではなく、真正なものが流通することが、ブランド棄損を軽減し、「敬意」という自然な気持ちから生まれる文化に繋がると信じています。 その為には徐々にこの取組に関わるクリエイターやKURA partnersの輪を拡げていきます。
ライブラリとしての機能
KURAはデジタルアセットを提供するだけでなく、職人技やデザインにおけるアーカイブとしても機能します。私たちは、各作品の背景、技術、意義を記録するために、アーティスト、業界の専門家と協力する予定です。独自の視点やテーマでキュレーションされたもののデジタルアーカイブは、物理的制約を超えて、その商品や技術の理解を深めることができます。プロダクトの新旧に関わらず、生まれたプロダクトをリリース段階で忠実にデジタル化し、世に生れ落ちるところから注視すべきだと考えています。
世界へ
私たちのルーツは日本にありますが、ビジョンは国境を越えて広がっています。日本の建築やものづくりは、世界のあらゆる人々の文化と相互に作用し、長きにわたってお互いが影響を受け合いながら発展を遂げ今日があります。本質的な美しさや持続可能性をはじめとした、共通の価値観を持つ方々とのコラボレーションの機会を通じて共に発展していく所存です。
これからに向けて
KURAはこれらのビジョンをベースに、私たちが考えるデジタルクラフツマンシップと共に実践していきます。前進する中で、私たちはクリエイティブの精度を高め続け、価値観を共感頂ける皆様との協力を育み、真正性やデジタルアーカイブの本質を追求し続けます。道のりは始まったばかりですが、私たちの使命は明確です。デジタルにも作り手の意図や職人技が現物と同じように尊重され、価値を認められる場所を創ることです。制作者として、パートナーとして、またはデザインの真の本質を理解するユーザーとして、この取組に参加していただくことを心からお待ちしています。

KURAのインスピレーションとしている蔵の画像は、重要文化財に指定されている旧篠原家住宅の蔵を撮影させて頂きました。大谷石で造られた堅牢で威厳のある外観は、長い間人々の生活と密接に関わり、保存と継続の象徴として現在も立派な姿で受け継がれ、在り続けています。私たちは、その持続的な存在はKURAがバーチャル領域で果たそうとする役割の教訓であり模範であると感じ、撮影と使用の許可の承諾をいただきました。
宇都宮市市民魅力部文化都市推進課文化財保存活用グループの皆様には、本ビジュアルの使用にご協力いただき、心より感謝申し上げます。

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