金属資源が不足した第二次世界大戦中の日本で、一時的に製造された陶器製の羽釜です。特に太平洋戦争開戦以降、鉄やアルミなどの金属は軍需に優先的に供給され、家庭用の調理器具に使うことが困難となりました。その代用品として、陶器による炊飯釜の製造が各地の陶器産地で試みられました。形状は金属製の羽釜に非常によく似ており、ふちが広がった羽形状が特徴です。底が厚く、蓄熱性には優れていますが、陶器ゆえに割れやすく、実用面では耐久性に課題があったとされています。赤土を用いた明るい赤茶色の素地が多く見られ、製品によっては側面に軍や工場の印章・刻印が施されているものもあります。現在ではその希少性と時代背景から、資料的・装飾的な価値を持つ工芸品とされています。
